2015.04.10

Kindle Paperwhiteは洋書にはとても良い

なんとなく前からモヤモヤと欲しかったのだけど、とうとうKindle Paperwhiteを手に入れた!

というわけで色々いじってみたのでその感想。なお、開封の儀とかは省略します

■どのKindleを買うべきか
2015年4月現在、Kindleのラインナップにはモノクロでe-inkを利用しているKindle/Kindle Paperwhite/Kindle Voyageの3つと、カラー液晶のFireシリーズがある。
e-inkは液晶ではないため目に優しくとても読みやすいが、モノクロであることと、基本的に静止画表示のためのものなので画面切り替えなどに難がある。が、お値段的にもとてもお手頃。ということでモノクロを買うことにした。

Kindle/Kindle Paperwhite/Kindle Voyageの3つは、解像度と内蔵ライトが主な違い。無印Kindleは解像度が低く、これだけ内蔵ライトが無い。Voyageは一番高い(2万円ちょっと)けど、一番解像度が高い。私はその真ん中ということでKindle Paperwhiteを手に入れた。これは解像度もソコソコで、内蔵ライトもあり、お値段も手頃(1万円ほど)という端末。


■良かったところ
・e-inkは確かに目に優しい。液晶でいつも疲れている目が、e-inkでは疲れない。見た目もとても自然で紙に近く、知らない人が見たら中に紙が入っていると間違えてもおかしくない。
・内蔵ライトはムラがちょっとひどいんだけど、夜寝る前に布団の中で読めるのはやっぱり便利。ただしe-inkのディスプレイは、明るいところでライト無しで見るのが一番キレイなので、できればライトは消して明るいところで読むことをおすすめ。
・大きさも実に手頃で、電車の中などでも持ちやすい。片手で簡単に持てるし、フィット感も良い
・Amazonで買った物がすぐにKindleに入るのはやはり便利。このお手軽さはクセになりそう
・英和辞書などの辞書が最初から入っているのにはびっくりした。洋書を読みながら、単語をタッチすればその場で辞書がひけるのはとても便利!


■悪かったところ
これは、残念ながら結構ある……。

まず一番イヤだったのが、日本語フォントが随分と貧弱なこと。

デフォルトでは、明朝体が2つ・ゴシック体が1つの、合計3つのフォントしか用意されていない。しかもこの明朝体は、どちらも結構読みにくくて正直微妙。

この写真だとあまりはっきり分からないかもしれないけど、Kindleは細い線や文字に「弱い」ようで、細い明朝体がとても読みにくい。何度となく、「ヒ、ヒラギノで読みたい……」と思ってしまった。

一方、洋書を読む限りでは、フォントは6つあるしそのどれもが読みやすい。このように日本語と英語の表示で、読みやすさ・見やすさが明らかに違うので、「ああ、やっぱりKindleって、アメリカで作られてアメリカで売られている、そのオマケの日本語版なんだなぁ……」と強く思い知らされてしまった。
そんなわけなので、Kindleを買って、「日本語の書籍がなんか読みづらいなぁ」と思っている方は、一度洋書を読んでみれば素晴らしさが再発見できると思う。

また、Retinaディスプレイに慣れてしまった身としては、やはり解像度の荒さが気になる。まぁKindle Paperwhiteはテキストを読むだけなら十分な解像度があるんだろうけど、それにしてもやはりドットの粗さが見えてしまう……まぁこれはRetinaディスプレイをふだん見ているかどうかによるかな。

それから、これは買う前から分かっていたことだけど、やはり画像切り替えの際の「暗転」が気になる。e-inkではその特性上、画面のリフレッシュのためにいったん黒くする必要があり、ページをめくっていると画面がいったん真っ黒になる。また特に画像は書き換えが多く必要なので、コミックを読んでいるとこのリフレッシュが多く発生する。要するに、Kindle Paperwhiteはテキスト閲覧のみとするべきで、コミック端末としてはおすすめできない。

またPDFも読めるというから入れてみたけど、これは本当にオマケ機能で、字が小さすぎてまともに読めないから使い物にならない。オライリーのPDFを入れてみたけど、やはり読むのはムリだった。「拡大しながら読めばいいじゃん」と思われるかもしれないけど、応答速度が激遅なe-inkの画面で、ピンチアウトで1ページずつ拡大とスクロールを繰り返しながら読むのは絶対無理だった。
またこれに関連して、Kindle版と言いつつページをスキャンだけして売っているような本は、Kindle Paperwhiteでは字が小さすぎて読むことができない。テキスト配信をしている、純粋な電子書籍モノじゃないとダメなので気をつけよう。


■結論
というわけで、Kindle Paperwhiteの結論としては以下の感じ。
・テキストを快適に読むためだけの端末として割り切りましょう。スマホやタブレット代わりになるものではありません
・洋書を読みたい人には、お値段とお手頃さから最高の端末だと思う
・日本語の書籍を読みたい人にも、そこそこオススメ。ただし、いつもRetinaのiPadを見慣れている人には厳しい
・コミックを読みたい人にはおすすめできない。Fireか、iPadを使いましょう
・オライリーなどの、分厚いIT関連の技術書を読みたいと思う人にも向かない(字が小さすぎて無理)。

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2014.08.27

戦前の、デング熱の情報を探してみる

日本で、実に70年ぶりのデング熱患者というニュースを見てびっくりしてしまった。戦争体験記を読んでいるとよく出てきた病気だからだ。

デング熱は第二次大戦中の日本でも、南方に行った兵隊さんは多く罹患したらしい。私の好きな、「さようなら 十度海峡」という戦争体験記を載せられているページがあるのだが、ここでもデング熱にかかる話が出てくる。
実際、兵隊として南方に行かれた色々な方々の手記を見ると、大抵の人は南国に行ってすぐにデング熱にやられるようだ。40度近い高熱が出るものの、命に関わることは滅多に無いため、軍医も「またか」という感じでろくに相手もされなかったらしい。

デング熱の特徴は発症直後のこの高熱と、さらにいったん小康状態になった後にもう一度発熱すること。これを「M字型」の熱型と呼ぶらしい。実はこの辺の情報は、やはり発症例が多くあった戦前の書籍に詳しく書かれている。やはり当時の人々も南方のことが気になったのであろう、マラリヤやデング熱の情報は専門の医学書から生活ハウツー本的なものまで幅広い。

ありがたいことに、この頃の戦前の書籍は、国立国会図書館の「近代デジタルライブラリー」でWebから自由に閲覧できる。皆さんも探してみると面白いと思う。ざっと「デング熱」で検索してみても、以下のように専門書の記述が色々と見つかった。

*台湾軍軍医部「熱帯衛生並に熱帯病提要」大正11年
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/934849/77

*入沢達吉 監修「内科学. 第1巻」昭和8年
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1051315/186

というわけで、国立国会図書館の「近代デジタルライブラリー」が面白い、という結論。

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2014.06.27

写真撮ったりしました:書籍「発見いっぱい! 実験キットブック」

しばらく写真活動がスランプ気味だったのですが、お手伝い&ちこっとだけ写真撮らせてもらった本が発売されました。のでちこっと宣伝。

永岡書店「発見いっぱい! 実験キットブック」

もともとお知り合いの先生に声をかけて頂き、私の尊敬する科学写真家の先生も参加されるということで撮影アシスタントさせていただきました。手タレとして結構出ています(^^;)。
また、1枚だけ私が撮った写真も載せて頂けたので、奥付にも名前載せていただきましたー。

内容は小学生向けの実験キットブックで、様々な実験材料と手引き書がセットとなったもの。これ一冊で色々な実験が楽しめてとってもお買い得かと思います。
特に添付されている三角トレイは、2種の液体を混ぜ合わせたりの作業が直感的ですし(2つのくぼみの真ん中で混ぜれば良い)、丸洗いできるので扱いやすく、なかなかの良品だなーと思いました。お世辞抜きで。

姉妹本の工作ブックも出ていますので、そちらもよろしければ。

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2012.12.31

2012年度・面白かった本ベスト10

読書日記(ozumaの本棚)から、今年も毎年恒例の2012年に読んだ本ベスト10を作りました。
(去年のはこちら:2011年に読んだ本ベスト10)

なおこのベストは、「私が2012年に読んで面白かった本ベスト10」なので、2012年の新刊本、ではありません。悪しからず。

■1位: ゾルゲ市蔵: 8bit年代記
当時、雑誌「ゲームサイド」に連載されていた頃から気になっていた作品。単行本にまとまったと聞いて購入した。1970-80年代のコンピュータゲームがメインテーマで、当時のゲーム少年たちがいかにゲームに熱中していたかが余すところ無く描かれている傑作。
特に素晴らしいのが第2話「We are the GALAXIANS」。ナムコのギャラクシアンでハイスコアを叩き出し続ける男と、それを見つめる主人公の少年のお話。当時のゲームが持っていた魅力と、もの哀しさを見事に描ききった作品。おすすめ。

■2位: 東村アキコ: 海月姫
これは友人から借りてきたのだが、面白さにあっという間にハマった。オタク女子たち「尼〜ず」の日々の暮らしと、世間(笑)との関わりがユーモラスに描かれる。
いやー、良い作品だ。どんどん続きが読みたい作品。

■3位: 押切蓮介: ピコピコ少年
これもゲーム少年のお話。お隣に住んでいたファミコン少女、ゲーセンで強い女の子、PCエンジンを求めて放浪、どれもこれもが面白い。
この作者さんが描く、幸薄そうな女の子も可愛い。面白かったなー。

■4位: 西村ツチカ作品集なかよし団の冒険
どこかでオススメされていたので購入。短編集。作品ごとにかなり作風が違い、絵もすごく変わる。一応、共通のテーマとして根底に「オンナのココロ」みたいのがあるのかなー。
中の一編、「チカちゃんの発明館」が良かった。発明少女とロリコン男子大学生のねじくれたお話、チカちゃんの着る「16-BIT」のTシャツがステキ。

■5位: フジイキョウコ: 鉱物見タテ図鑑 鉱物アソビの博物学
鉱物図鑑は真面目な物からくだけたものまで色々あるけど、これは鉱物を色々なものに「見立て」て語ってくださる。
そういう変にアートを狙ったものは好きじゃないのだけど、この本はそんなことなく、全てが美しくステキ。鉱物の面白さが素直に感じられた一品でした。

■6位: 宮本常一: 庶民の発見 - 宮本常一著作集21
民俗学にちょっと興味を持って図書館で借りてきた。日本中を旅して民俗学研究に没頭した著者による、庶民の生活を丹念に追った一冊。
村の「ヨメ」のあり方、オシラさま、出稼ぎとは、なぜ田んぼのアゼが曲がりくねるのか……などなど、単なる雑学程度の知識しか無かったところに民俗学的な厚い裏打ちをしてもらった感じ。重いけど楽しい本。

■7位: 青野春秋: 俺はまだ本気出してないだけ 5
中年ダメ男のシズオが漫画家になるべく頑張る(?)作品、堂々の完結。
脱サラしてパン屋をはじめた友人を描く「パンを焼く」でデビューなるか。この作中作が地味に良いのだが、若い人にはピンと来ない、おっさんにしか分からないだろうなぁ雰囲気。
中年男性のモヤモヤ感と家族愛、なかなか良い作品だった。

■8位: 長嶋有: ねたあとに
山小屋でひたすら遊びに興じる人たちを描いた小説。遊びは、「ケイバ」「顔」「それはなんでしょう」「軍人将棋」など、今だとアナログゲームと呼ばれるもの。
ボードゲームやTRPG好きな人にはおすすめ。このけだるい感じがたまらない。

■9位: R.P. ファインマン: 困ります、ファインマンさん
物理学者・ファインマンのエッセイ集。例のチャレンジャー号事件の調査報告を書き上げる顛末が載っている。
NASAのような組織でもこれだけ現場と上層部の乖離が激しくてダメになってしまうんじゃ、日本の会社がどうしようも無くなるのも仕方ないのかなぁ……とか、ちょっと暗澹たる気持ちになってしまった。色々考えさせられるので、特に理系ならば必読。

■10位: こうの史代: ぴっぴら帳
当時、まんがタウン(元は「クレヨンしんちゃん増刊号」だった)で読んでいた。
迷子の小鳥「ぴっぴらさん」を飼い始めたキミ子とその周辺のひとびとのお話。絵柄もお話もかなり旧式、しかし決して古臭くなくどこか懐かしい。結局、ツナさんとどうなったんだ! とか、そもそもツナさんどこに就職してどうして帰ってきたの! とか色々未解決なんだが、全体のこの古き良き昭和的な雰囲気が好き。
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ということで、2012年も色々面白い本を読んだなー。
来年も面白い本に巡り会えますように。

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2012.01.03

2011年度・面白かった本ベスト10

読んだ本は読書日記(ozumaの本棚)に付けているため、今年も毎年恒例の2011年に読んだ本ベスト10を作りました。
(去年のはこちら:2010年に読んだ本ベスト10)

なお毎回書いていますが、これは「2011年に私が読んだ本ベスト10」なので、2011年に出版された本、ではありません。あしからず。

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■1位:士郎正宗: 攻殻機動隊 (1) KCデラックス
いろいろ迷ったのだけど、今年ベストはこれかなぁ。ジャンルは「ニューロマンサー」を源流とするサイバーパンクSFで、舞台は「ネット」が世界を覆って電脳化・義体化技術が進歩した未来の日本。そこでの公安部隊を描いたおはなし。
SF好きとか名乗ってる割には恥ずかしいことにずっと未読だったのだが、某所で捨てられそうになっているのを捕獲してきて読んだ。あんまりの密度の濃さと面白さに、読み終えた日には微熱が出てしまったよ (´∀`)

アニメ版とは随所の設定が結構違っていて、このマンガ版は少佐が非常に「若い」。でもクールすぎるアニメ版よりは、このくらいの少女っぽさが残る方が面白いかな。
1回読んだだけではとても消化しきれない、濃い作品でしたわ。「ネットは広大だわ……」


■2位:村上春樹: 1Q84 BOOK 2
ううむ、ベストセラーの紹介になってしまい申し訳ないのだが、2位はこれかな。内容はあちこちで語られているだろうから省略。

1Q84は3冊を友人から借りてきて読んだけど、1はなかなか入れず3は空回りばかりという印象で、2が一番良かった。ただ、面白い小説なのは確かなんだけど、やっぱり「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」は名作だったなぁ……という結論になってしまうのはなかなか皮肉なところだ。


■3位:北杜夫: どくとるマンボウ医局記
昔から北杜夫さんのファンだったのですが、2011年に亡くなられてしまいましたね……ご冥福をお祈りします。
この巻は、北杜夫氏が医師免許を取って慶応病院で働き始めた頃から、地方の精神病院に出向してその後医者をやめるまで、あたりの回想録。

地方の精神病院では色々と事件が起こり、そこでは北杜夫氏が医者をやめるきっかけとなるような出来事も書かれる。若い人はあんまりピンと来ないかもしれんけど、仕事に疲れたおっさん(私含む)にはなかなか面白い本でした。


■4位:ナショナルジオグラフィック 傑作写真ベスト100 ワイルドライフ
今年は写真集もいろいろ図書館で見たけど、ベストは間違いなくこれ。ナショナルジオグラフィックの野生動物傑作写真集。ネズミに襲いかかる瞬間のガラガラヘビ、脱皮するタランチュラ、どれも素晴らしい。
うーん、写真を文章だけで語るのは無力だな。図書館にもよくあるので皆さんぜひ見てみてください。


■5位:ボクの満州—漫画家たちの敗戦体験
タイトル通り、満州で敗戦をむかえた経験のある漫画家たちが、思い出話を語る。ただ「悲惨だった」と語るだけではとても伝わらない、現場での生々しい体験がとても興味深い。
変に偏った思想的なものを押しつけるわけでもなく、当時の様子をひたむきに語ってくださる良書。


■6位:ケン・リブレクト: 雪の結晶 小さな神秘の世界
雪の結晶の写真集はいくつか見たけど、この本ほどパワフルかつ詳細なものは見たことが無い。単に美しい雪の結晶を載せるだけではなく、その成長のメカニズムについても熱く語ってくださる。なぜ6角形になるのか、なぜ枝を伸ばすのか、ひとつひとつにとても丁寧な説明が与えられている。
ちなみにランキングからは漏れましたが、「中谷宇吉郎: 雪 (岩波文庫)」という1938年に書かれた雪の研究書も面白かったです。雪の人工結晶を作る装置作りなどが描かれていて、学者というのはこうあるべきだなぁという見本。


■7位:米澤穂信: 犬はどこだ
米澤穂信さんは、はるか昔にご本人がネットに書かれていた文章で、「シューターを名乗る男がエスプレイドの2P側に座らなかったためバレる」というミステリ(?)でずっと印象に残っていた。
このお話は、犬探しをする調査事務所を設立した主人公とその後輩の凸凹コンビが、いろいろあって頑張った、というユーモアミステリ。

中にネット上でのやりとりが出てくるのだけど、小道具としてムリに使おうとされておらず、実に自然で面白い。特に凝った仕掛けなどがあるわけではないのだけど、二人のストーリーの絡み、ちょっと悲しいラストなど、なかなか心に残った一冊でした。


■8位:福本伸行: 賭博破戒録カイジ
前々から気になっていたのを全巻大人買いして読んだ。前作「賭博黙示録カイジ」で借金を作ったカイジが、地下世界のタコ部屋へと放り込まれる。
地下でのチンチロリン合戦は本当に面白い。班長のイカサマを見破るだけでなく、そこから地下ルールを利用して一発逆転とするための完璧な作戦は実に綿密周到で息つく暇も無い。

後半、パチンコ「沼」だけでなんぼなんでも引っ張りすぎだろうとは思ったけど、しかし名作であった。「さすがのカイジも2日連続豪遊は猛省……!」


■9位:伊坂幸太郎: アヒルと鴨のコインロッカー
伊坂は「モダンタイムス」が一番面白かったけど、これはまたなかなか良かった。ミステリ……という扱いで良いのかな。書店を襲って広辞苑を奪おうと誘われる大学新入生の「僕」と、ペットショップ店員。並行して語られる2つのストーリーは、関連があるようでいてあちこちに「違和感」が生じ始める。その違和感の正体とは……。
中盤あたりからにわかに増す緊迫感が非常に良かった。面白いだけじゃない、心にじんとくるお話でした。


■10位:椎名誠: いいかげんな青い空
アサヒカメラ連載の「シーナの写真日記」をまとめたもの。この連載は大好きだったので、単行本化は大変に嬉しい。
世界をあちこち旅する椎名さんの淡々としていてどこか暖かみのある文章と、添えられた3枚の写真がどれも素敵。極寒のロシアに行ったかと思えば、次には南国でヒルネをしている。連載時も3ページだったので、パラリパラリと気軽にめくって読める本でした。
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と、以上かな。
2012年も、面白い本に巡り会えますように。

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2011.01.04

2010年に読んだ本ベスト10

毎年恒例の、2010年に読んだ本ベスト10を作った。
(去年のはこちら:2009年度・面白かった本ベスト10

なお私は基本的に新刊を買わないので、このリストは「私が2010年に読んだ本」であって、2010年に出版された本ではありません。よろしく。

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■1位:森見登美彦「夜は短し歩けよ乙女」
文句なしにこれがベスト。京都を舞台にした大学生の恋愛ファンタジー小説、その軽妙かつ高尚な文章と内容がたまらない。
特に京都に住んだことがある人にはおすすめ。なむなむ!

■2位:ゆうきまさみ「機動警察パトレイバー」
近未来の日本で作業機械「レイバー」が普及する中、これを利用したレイバー犯罪も増加。その対策のために警視庁内に発足したレイバー部隊「特車二課」で起こる様々な事件を描くお話。
究極超人あ?るファンとしては今さらで申し訳ないのだが、やっと全巻きちんと読んだ。そして感動。感涙。ロボット物としても、警察モノとしても、仕事に疲れちゃったサラリーマン悲哀モノとしても傑作。是非読むべき。

■3位:小林健二「ぼくらの鉱石ラジオ」
ゲルマニウムラジオに興味を持って何冊か読んでみたのだけど、その中でもこの本は質・量ともに圧倒的で他のモノを全く寄せ付けない素晴らしい本だった。
ラジオ好き、アンティーク好き、電子工作マニア、小物製作趣味な方、全てにオススメ。

■4位:福満しげゆき「僕の小規模な失敗」
ダメな青年がダメな生活を送るさまをダ メダ メ(褒め言葉)に描く私小説的マンガ。
こういう鬱々とした心境をひたすら語るさまが実に生々しく、なんというか実にリアル。悩める青年におすすめ。

■5位:オースン・スコット・カード「消えた少年たち」
上下巻で約900ページ、とても長い。あるアメリカの街でのフレッチャー一家の生活を、これでもかとこと細かに描いて行く。
どの「事件」もじつに生々しいが、よその人にとってはどうでもいい、小さなこと。その家の中の小さな事件で家族と親子の絆を描いていくさまが素晴らしい。小さなお子さんがいる人におすすめ。

■6位:福本伸行「賭博黙示録カイジ」
超有名なこのマンガだけど、ようやっと今さら読んだ。評判通りに大変面白い。
たった一つのカードゲームで、よくもあそこまで掘り下げて書けるものだなぁ。

■7位:板倉聖宣「光と虫めがね」
仮説実験授業の板倉氏による、授業書とその解説。
この授業書は実に面白い。一応私は物理系の大学院生だったのだが、理解が曖昧であったところがスイスイと頭に入ってきた。カメラに興味ある人にもおすすめ。

■8位:伊坂幸太郎「モダンタイムス」
伊坂は色々読んだけど、これが一番面白かった。
「Web検索」をテーマにした小説なのだけど、元エンジニアということもありその細かな描写が実に的確。一般人もWeb系で働いている人も楽しめる一品。

■9位:乙一「小生物語」
嘘日記、とでも言おうか。氏の日々の生活を淡々と、ホラ吹きながら語ってくださる。さらりと読めてとても奥深い、大変面白かった。

■10位:林亮介「迷宮街クロニクル1 生還まで何マイル?」
ライトノベルなのだけど、題材は完全に「和製ウィザードリィ」。当時、ボーナスポイント29が出るまで6時間粘ったり、マロールで石の中に突っ込んだり、カント寺院でロストされて自分が灰になった人は楽しく読める。
逆に言うと、Wizやったことない最近の若い子がこれ読んで楽しいんだろうか? とは思うけど。
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というわけで今年も面白い本に巡り会えますように。

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2010.01.04

2009年度・面白かった本ベスト10

恒例(?)の2009年に読んだ本ベスト10を作ってみた(去年の:2008年度・面白かった本ベスト10)。

なおこのリストは、「私が2009年に読んだ本」であって、2009年の新刊ではありません。あしからず。

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■1位:京極夏彦: 鉄鼠の檻
やはりトップはこれだろう。ボリュームも満点、面白さも満点。禅寺でのお坊さん連続殺人事件。さすがは京極とうならされること500回。
この世には、不思議なものなど何ひとつないのだよ。


■2位:ホイチョイ・プロダクションズ: 気まぐれコンセプト クロニクル
例の、スピリッツで連載されていた漫画の傑作選。もちろん単純に読んで楽しめるというのもあるが、順に読んでいくだけで日本風俗史的なものが見えてくるのも本当に面白い。
今の不況の時代では想像もできないような働き方を、昔の好景気の頃のサラリーマンはしていたんだなぁ。と若い人にも読んでもらいたい作品。


■3位:荻原浩: 神様からひと言
食品会社で苦情処理係として奮闘する主人公をおもしろおかしく描く、ユーモアサラリーマン小説。
この本はタイトルと装丁で本当に損をしている。もっと、ゲラゲラ笑える楽しい小説ですよ〜みたいに見せればいいのに。ホント、働く日本人には是非読んで欲しい、オススメ。


■4位:池田理代子: ベルサイユのばら
恥ずかしながら今さら読んだ。そして圧倒。感動。
つべこべ言わずに今すぐみんな読もう。オスカルは男かと思ってたら女だった。


■5位:こうの史代: 夕凪の街 桜の国 (双葉文庫)
ヒロシマを舞台とした女性の物語。と言っても、よくある反戦作品とは一線を画す漫画。
現在の我々の社会が、死者の上に成り立っていることを強烈に教えてくれる傑作。日本人ならば必ず読むべき。


■6位:舞城王太郎: 煙か土か食い物
舞城のデビュー作。今さら読んだ、恥ずかしい。
一応はミステリに分類されるのだろうが、それはあくまで手がかりで、面白さはその枠からはみ出しまくり。


■7位:玖保キリコ: バケツでごはん
スピリッツで連載されていた、動物園で働くペンギン「ギンペー」を主人公とした漫画。
可愛らしい絵柄とは裏腹に、中身はとても濃いサラリーマン社会を描いていてすごく生々しい。働くことに疑問を持っている勤め人の方々にオススメ。


■8位:C.V.Boys: しゃぼん玉の科学
私は今は地域の児童館で実験教室ボランティアをしているのだが、そこでシャボン玉をやろうと思って読んでみた。
1959年とかなり昔の本なのだけど、内容はとても新鮮で古さを感じさせない。科学読み物として現代でも是非読み継がれて欲しい作品。


■9位:北杜夫: どくとるマンボウ青春記
これも有名な作品。今さら読んだ、恥ずかしい。
北杜夫の旧制高校時代の思い出話だが、やはりそれがどれを取っても面白い。若いうちに一回、年を取ってもう一回読みたい本。


■10位:染川香澄, 吹田恭子: ハンズ・オンは楽しい―見て、さわって、遊べるこどもの博物館
世界の博物館の紹介本。安易なガイドブック的なものではなく、しっかりした内容で是非言ってみたい気分にさせられる。
子どもと博物館が好きな方に読んでもらいたい本。
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うーん、こんなところか。今年はマンガが面白かったな、4つも入った。
2010年も、面白い本に巡り会えますように。

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2008.12.31

2008年度・面白かった本ベスト10

というわけで年末なので、恒例(?)の2008年に読んだ本ベスト10を発表しよう(去年の:2007年度・面白かった本ベスト10)。

ちなみに私は、新刊は全くと言っていいほど読まないので、このベスト10は「2008年に発売された本」ではなく「2008年に私が読んだ本」のベスト10です。あしからず。

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■1位:とよ田みのる: FLIP-FLAP
TOPに迷ったが、やはりこのマンガを挙げたい。「ピンボールラブコメ漫画」という一言では語り尽くせぬ、素晴らしき物語。
今までピンボールには漠然とした興味しか無かったが、私もすっかりピンボールファンとなってしまったよ。全日本国民が必読。


■2位:亀井高孝, 桂川甫周: 北槎聞略―大黒屋光太夫ロシア漂流記
江戸時代のロシア漂流記。とてつもなくデカいスケールの大冒険記は、歴史資料としても貴重であり、単純に読み物としても楽しめる絶品。
書物という物のありがたさがよく分かる。後世に残すためにも、是非皆も読め。


■3位:村上春樹: 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド
恥ずかしながら、今さら読んだ。最初の数ページはあまり面白くなく、「ハズレを引いたかなぁ……つまらない」と思っていたが、いつの間にか物語へとどっぷり引き込まれていたよ。
いきなり鷲掴みにされるのではなく、じわじわと虜にされる小説だ。ちょっとした小道具など隅々まで手抜きが無く、素晴らしい。


■4位:吉田戦車: なめこインサマー
超絶爆笑の絵入りエッセイ。やはり吉田戦車は天才。
こういう本を楽しんで読めない人間には、一生、近づきたくないもんだ


■5位:田中圭一: サラリーマン田中K一がゆく!
とてつもなく下品でとてつもなく笑えるサラリーマンギャグ漫画だが、しかしその底にはとてつもなく真面目なストーリーが一本通っている。
疲れたサラリーマンにオススメの一冊。


■6位:アーサー・C. クラーク: 2010年宇宙の旅
有名な2001年宇宙の旅の続編。しかしこっちの方が圧倒的に面白かった。
惑星内の描写などが実に詳細で、まさしく"Science"小説。2001年よりも取っつきやすいし、皆も読むべき。


■7位:ケストナー: 飛ぶ教室 (光文社古典新訳文庫)
少年たちと、大人の友情物語。
こういう小説を楽しめないような、汚い心の大人にはなりたくないなと再確認。


■8位:とりかへばや物語 1 春の巻
姫君として育てられた男の子と、若君として育てられた兄妹の宮中物語。平安時代の成立なのに、実に現代的かつ先進的な話に驚愕した。
ちなみに表題の「とりかへばや」は、古語で「取り替えたい」という意味。父親の心中の嘆きだ


■9位:広瀬正: マイナス・ゼロ
タイムスリップ小説。昭和初期へと時間遡航を行い、様々な騒動をぴたりぴたりと解決していく心地よさ。
最近、復刊したらしく文庫で簡単に手に入る模様。みんな買え。


■10位:椎名誠: 極北の狩人
シーナさんの北極圏ルポ。DVDが添付されており、その裏話が本の方で楽しめる。
旅人として達人の方なだけに、素直かつ深いルポが楽しめた。


■11位:尾崎紅葉: 金色夜叉
「来年の今月今夜になつたならば、僕の涙で必ず月は曇らして見せるから」でお馴染みの貫一金融小説(?)。やはり古い小説なのでちょっと文体にてこずったけど、中身は実に(いい意味で)通俗的で面白かった。
しっかしこの作品から100年たっても、高利貸しはサラ金から消費者金融と名前を変えて未だに生き残っているな。尾崎紅葉が今の日本を見たら、どう思うんだろ。


■12位:赤木智弘: 若者を見殺しにする国 - 私を戦争に向かわせるものは何か
"「丸山眞男」をひっぱたきたい 31歳フリーター。希望は、戦争。"の方の本。細かい部分にツッコミ所は山ほどあるが、総論賛成。もう、今の「高齢者による若者いじめ」っぷりは、このくらいガンガン発言してくれないと突破できないよ。
しっかし、私も人生のうちで一度くらいは、好景気という奴を体験してみたいもんじゃのぅ。30年近くも続く好景気の中で働き続けてきたなんて、今の高齢者は本当に運のいい世代なんだなぁ。
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気が付いたら、ベスト10のはずなのに12位まである。まぁ気にしない方向で。
来年も面白い本に巡り会えますよーに。

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2008.03.31

髪を切った&ノロ?

日曜日に、髪をバッサリ切った。これで半年は切らずに済むぜ

が、夕方から急に悪寒と下痢がひどくなり、今日はほぼ一日動けず……風邪かと思ったけど、どうも土曜日に食べたホタテ貝にあたった気がする。
これはたまらん

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2007.05.20

自動車絶望工場を読んだ

普段、本の感想は読書日記の方に付けているのだが、ひどく印象的な話があったので紹介しよう。
読んだ本は、鎌田慧: 自動車絶望工場 ある季節工の日記

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あるラインを5人で作業していて、作業量が(A)のようになっているとしよう。灰色部分が作業時間、空白部分が手持ち時間(ムダな時間)であるとする。
20070520toyota
この工場の経営者が、コストカットから人員削減をしようと思う。すると、パターンとしては(B)か(B')のどちらかになる。
実はこの場合、(B)は「良い改善例」で(B')が「悪い改善例」なのだ(良い悪いは、労働者側ではなく経営者側の視点である。念のため)。

*(B')のまましばらくラインを動かすと、各作業者は作業のペースが出来上がってしまい、さらにこのラインに作業行程を追加する時に作業者の心理的抵抗が大きくなる。また、このやり方ではVのクビを切ることはできたが、IVは今後もクビを切れない。
*(B)のようにすると、各作業者からは「IVがヒマだ」ということがはっきり分かる。そのため、このラインに作業工程を追加する際、IVに追加しても作業者達から抵抗されない。また、今後のラインの見直しで作業を減らし、IVのクビを切ることも視野に入れられる。
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いやはや、人間というのは恐ろしいことを考えるもんだねぇ。トヨタ自動車のあの利益は、こういう徹底的な「作業者を人間として見ない」という考えから生じているわけだ。
駄目サラリーマンの私としては、敵がどういう考えで攻めてくるかを、こうして知っておくべきだと痛感したよ。

しっかし、世の中のコンサルタントとかいう種族どもは、経営効率化とか言ってこういうことばっか考えてんだな。いやはや。
自分の仕事が多くの人の不幸を産みだしていることが、恥ずかしくないのかね? 素朴な疑問を持った。

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